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【レポート】
ふくつの自然を学ぶ連続学習講座2019
「たべる!あそぶ!大峰山探検-里山とつながる豊かな暮らし-」
2019年10月27日(日)に福津市大峰山にて「たべる!あそぶ!大峰山探検-里山とつながる豊かな暮らし-」を開催いたしました。今回の講座は、①「探検の時間」:大峰山を歩きながら植物について知る②「食べる・遊ぶ時間」採ってきた植物を食べたり草木染め体験を通して遊ぶ③「考える時間」1日を通して学んだこと、発見したことを地図作りで共有する、という3つのステップで構成されていました。当日は天気にも恵まれ、市内外の子どもから大人まで約30名が参加し、大峰山に生育している植物について楽しみながら学び、これからの大峰山と暮らしのつながりについて考えることができました。
まず、渡公民館にて九州工業大学環境デザイン研究室の伊東啓太郎先生から、福津市の自然環境の現状や2014年から福津市役所と協働で取り組んできた第2次福津市環境基本計画・生物多様性ふくつプランの策定・実践のプロセスと本講座の趣旨説明、講師紹介をしていただきました。その後、大峰山の地図とインスタントカメラ(チェキ)を持った参加者たちは、大峰山に移動しました。
「探検の時間」
今回の講座で一緒に大峰山を歩き、大峰山の植物や生活の中での利用のされ方を教えてくださった先生は真鍋徹先生(北九州市立いのちのたび博物館)です。真鍋先生は伊東先生が博士後期課程の頃からの共同研究者で、森林生態学をご専門にされている先生です。真鍋先生からは、大峰山に生息している植物の特徴や生活の中での利用、食べられるのか食べられないのか、似た植物との見分け方などを教えていただきました。中でも特徴的な樹の1つに、マテバシイがあります。大峰山に生えているマテバシイはまっすぐの木ではなく1つの株から何本にも分かれて木が生えています。マテバシイのどんぐりを食べながらマテバシイの樹形の秘密について、参加者みんなで考えながら山歩きを続けました。山頂付近では、ヤマイモのムカゴを発見しました。食べるととても美味しいムカゴですが、実はヤマイモが繁殖するためのクローンだそうです。ほかにもたくさんの植物について詳しく教えていただき、参加者は地図にメモをとったり、チェキで写真を撮ったりしていました。
「食べる・遊ぶ時間」
食べる・遊ぶ時間の先生は周藤和美さんと須藤朋美さんです。周藤和美さんは、Little Yardというお名前の流木作家で、大峰山で歩きながら見つけたアオキ、ドングリの殻斗(帽子)、クズを使って草木染めをレクチャーしてくださいました。参加者がそれぞれ染める布に模様をつけ、染液の中で煮込みました。布を染めている間に山歩きの中で見つけた、子どもたちの遊びについて九州工業大学の須藤朋美先生からお話がありました。子どもたちは設定されていない空間の中で、持ち上げたり、飛び越えたり、投げたり、自分の身体に合った遊びを見つけながら山歩きをしていました。
「考える時間」
考える時間では、暮らしの問屋の古橋範朗さん、三粒の種の木村航さんのファシリテーションによって地図作りを行いました。山歩きの中で参加者が撮影した写真やとったメモをもとに、大峰山の情報を見える化していきます。参加者は、山歩きで学んだことを1枚の地図に書き込んでいきます。どんな場所に生えていたか、植物の形の特徴、食べられる、食べられない、おいしい、おいしくない、など様々な情報が地図に書かれていきました。子どもたちは、山で採ってきた枝木や実を直接地図に貼り、1枚の大きな地図が完成しました。最後は完成した地図をみんなで囲み、木村さんのガイドによって、もう一度大峰山の植物探検を頭の中でシミュレーションしました。完成した地図は、みんなの縁側王丸屋に飾っていただいています。
大峰山は、地域の人々が生活の中で利用することによって豊かな自然環境・生物多様性が維持されてきた里山です。生活スタイルが変わり、暮らしの中で自然資源を利用する機会が減った今、モウソウチクの拡大や植生遷移の進行などにより暗い森になっています。そこで大峰山では、地域の人々が里山の新しい価値を見出し、モウソウチクやマテバシイの手入れをする仕組みづくりが行われています。今回のように、大峰山のことを楽しみながら知り、今後の暮らしとのつながりについて考える機会や、地域の人々が手入れに関われる機会を今後もつくっていくことが大切だと思います。
文章:長谷川逸人
【マネジメントメンバー】
環境デザイン研究室:伊東啓太郎教授,須藤朋美助教
修士2年 飯川裕基,小池拓也,長谷川逸人,栁田壮真,
修士1年 塩手健斗
学部4年 古賀亜希子
研究生 欧静寧
暮らしの問屋:古橋範朗さん
三粒の種:木村航さん
みんなの縁側王丸屋:冨永透さん
Little Blue:周藤和美さん